大人数でインセプションデッキを決める機会があったので自分たちがやったこと、わかったことをまとめておく。 今後、大人数でやる機会があるときに参考になればと思う。
ここではインセプションデッキの詳細については特に説明しない。 インセプションデッキ自体は他に分かりやすい資料があるのでここに共有しておく。
www.slideshare.netインセプションデッキとは
インセプションデッキとは、プロジェクトの全体像(目的、背景、優先順位、方向性等)を端的に伝えるためのドキュメントである。 ThoughtWorks社のRobin Gibson氏によって考案され、その後、アジャイルサムライの著者 Jonathan Rasmusson氏 によって広く認知されるようになっている。
インセプションデッキのひな形があるのでリンクを紹介しておく。 github.com
テンプレートのインセプションデッキは主に以下のような構成になっている。
- 我われはなぜここにいるのか
- エレベーターピッチを作る
- パッケージデザインを作る
- やらないことリストを作る
- 「ご近所さん」を探せ
- 解決案を描く
- 夜も眠れなくなるような問題は何だろう
- 期間を見極める
- 何を諦めるのかをはっきりさせる
- 何がどれだけ必要なのか
インセプションデッキを作成した理由
もともとプロジェクトに定義のようなものは存在したが 一部のメンバーのみで決めたのでチームのメンバに見てもらえなかったり、読んでも理解が困難だった。 そこで、私たちのアジャイルプロジェクトにおいては、インセプションデッキを用いてプロジェクトに対する期待をマネジメントするため。
やったこと
人数が多いので、どのような進め方をするかなど事前に設計した。 ここでは、進め方や実際に自分たちが使ったインセプションデッキについて 簡単に紹介する。
インセプションデッキをカスタマイズする
インセプションデッキのテンプレートを自分たちのプロジェクトに適応しずらい部分が 多かったり、既にまとめられている項目があったりと情報量が多かったため あらかじめテーマをいくつか絞ったカスタマイズ版を使った。 カスタマイズした中には、テンプレートと同じ意味合いでも表現を変えたり 順番を変えることでメンバーがイメージしやすいことを意識している。
- プロダクトの概要 (エレベーターピッチ)
- WHY?プロジェクトの背景とゴール (我々はなぜここにいるのか?)
- みんなで考えた プロダクトの特長 (パッケージデザイン)
- やらないことリスト
- 優先事項の確認 (トレードオフスライダー)
- プロジェクトのリスク
構成
ファシリテーター:2名
参加者:約20名
場の進め方
インセプションデッキを作るにあたって 私たちの設計したやり方はこんな感じだ。
- インセプションデッキの説明
- インセプションデッキとは?
- 背景の説明
- なぜインセプションデッキをやるのか?
- グループ分け
- 人数が多いと発言が偏るので、グループワーク形式を採用
- Design the Partnership Alliance(DPA)を使って場を設定
- どんな雰囲気でこの会を行いたいか?
- 各テーマについてグループワーク ※ここを繰り返す
- 個人でアイディアを出す
- グループ内でアイディアを共有・まとめる
- グループ間でアイディアを共有・まとめる
- インセプションデッキを見直す
- 後で決める系の5W1Hを決定する
インセプションデッキの説明
集められたメンバーの中には、インセプションデッキが何なのか不明なメンバーもいるので 全員のインセプションデッキについてのイメージを統一するためにも説明をした。
背景の説明
なぜインセプションデッキが必要になっているかを説明する。 インセプションデッキを作成する理由を明確にすることで解決したい内容が何なのか?を明確にすることで 参加メンバーの目的意識が明確になる。
グループ分け
参加人数が多いと意見を出す人が偏ってしまったり、十分な対話が出来ないことが多いので 今回はグループワークを採用した。 大体4~5名くらいのグループを作り各自意見を出しやすい場を作る。
Design the Partnership Alliance(DPA)を使って場を設定
私たちのチームが普段ふりかえりのファシリテーションの時にやるDPAというアクティビティを取り入れた。 どのような雰囲気でインセプションデッキ決めの会を進めたいか? 決めた雰囲気を実現するために具体的に何を行ったら良いか?をグループで考えてもらい みんなのインセプションデッキ決めのルールとした。 目的として自分たちでルールを決めることで、この会が他人事ではなく自分事になるようにする狙いがある。
ちなみにみんなが決めたルールとアクションは以下になる
- みんなが意見を出しやすい雰囲気
- 相手を否定しないこと
- 意見を出した後に拍手すること
※ルールやアクションが多いと守るのが大変なので2~3個くらいに抑えるのがおすすめ
各テーマについてグループワーク
インセプションデッキの各テーマをグループワークして考えてもらった。 1テーマごとに共有してスライドを埋めていくスタイル。
グループワークの内訳
個人でテーマについて考える - 5 min
グループ内で共有/まとめ - 15 min
グループ間で共有/まとめ - 10 ~ 15 min
やってみると分かるが、少数に分けると普段発言しない人も 発言するようになるので貴重な意見が聞けることが多かったりする。 特に、普段別の役割として仕事している人同士の方が多角的な意見が出やすいので グループ分け時に少し工夫してみると良いかもしれない。
また、テーマについてグループワークでディスカッションすることも効果的である。 私たちの場合は、インセプションデッキのトレードオフスライダーの各項目を定義をグループワークで決めた。 これにより、各項目が何を意味しているのか全員が明確になるため、後になって認識の違いが生まれることが少ない。
インセプションデッキを見直す
インセプションデッキの全てのテーマについて決まったら全体を通して確認してみる。 全体像が見えてくると「やらないこと」が変わったり微調整する部分があるので 自分たちのデッキを確認しなおすことをおすすめしたい。
後で決める系の5W1Hを決定する
インセプションデッキの中で発生したリスクや別途考える系の問題を具体的なアクションに落とし込む。 本来であれば、インセプションデッキ会の中で解決したいものもあるが時間の制約や人の集まりにくさがある場合がある。 私たちの場合は、問題やリスクに対して「なぜ、なにを」の部分が明確だったので 「誰が、いつ、どこで、どうやって」だけは明確にして別途決める会のスケジュール等を明確にして リスクなどがそのままにならないように注意した。
統括
インセプションデッキを決めると関係者全員が同じ方向を向くことが出来るし 道に迷ったときに見直すと軌道修正出来るので、プロジェクトに限らずチームでもインセプションデッキを作ったほうが良いと思う。 今回はファシリテーターの立場として参加したが、みんなが対話してどんどん決まっていくのは、見ていて凄く楽しかったので今後も社内でやっていきたいと思う。
参考
インセプションデッキが紹介されている書籍
- 作者:JonathanRasmusson,西村直人,角谷信太郎
- 発売日: 2017/07/14
- メディア: Kindle版